2018年2月22日木曜日

幸福な孤独たち

浜美枝。往年の美人女優。

その稀有な美貌についてはさておき、私は旧くからこの人に関心を抱いていた。

そもそも、私が古民家に興味を持つようになったのは、この人の古民家暮らしを取り上げたテレビ番組がきっかけだった。もう二十年以上前のことだ。

早くから農業や民芸や日本伝統の生活様式に関心を寄せ、関連の活動をなさってきたことも承知していた。

しかし、ご本人の文章を読んだことはなかった。

つい先日、ふと思いたってエッセイ集を購入した。『孤独って素敵なこと』だ。

題名の表面的な意味とは裏腹に、人とのつながりの大切さをテーマにした本だ。

淡々とした文章に、自ずと著者の真摯な人生観と豊かで繊細な感受性が滲む。

感情を抑制した表現に、かえってしみじみとした感動を誘われて、何度か目頭を熱くしたほどだ。

随所に、世界的な著名人達との交際や、貴重な骨董品、美術品の購入についての記述があり、ややもすれば嫌味な自慢話に陥りがちだが、そうならないのは、本書全体に通底する著者の内省的な姿勢に因るのだろう。

通読して、浜さんと私の価値観や感性の重複に驚いた。その大部分を、私は母から受け継いだと感じている。

かたや世界的な美人女優と、かたや地味で平凡な主婦。

似ても似つかぬ二人だが、少女時代の困難な境遇に共通点を見出だすことも可能かと思いついた。

いやいや、それは無理やりのこじつけかもしれない。

ともあれ、自ら振り返って数々の恵まれた交友と幸福な家族との絆を語るエッセー集に、敢えて孤独の二文字を冠した著者の心境を推し量ると、私は深い感慨を胸の奥に飲み込まざるを得ないのだ。


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