なんとも予想外の幕切れだった。
今日は、先日人を介して見積もりをくれた板金屋さんと直に会って屋根張替えの詳細を決定する予定で、11時に憬月荘で待ち合わせていた。
9時半頃に着いたので、田んぼの灌漑の工夫(具体的な内容は割愛)と水路脇の草刈り(もちろん手鎌で。そんな人近所に一人もいない。隣のおカアさんがその度にソレトナク刈り払い機の購入を勧めてくれる。)をして待った。
板金屋さんが着いて、初対面の挨拶をして、なんだかんだ話して(人づてに我輩の土壁張りや、かまど造りの計画を聞いたらしく、そっちの話でまず盛り上がった。)、結局、こちらの意向どおり棟も鬼も全部省略して、なるべく安くすることに決めた。ガルバリウム波板の色を聞かれたが、色無し、地肌の銀色と即答した。
「この前まで暇で困ってたのに、急に2件入っちゃって、20日には始められると思うんだけど、いいですかねー。」「急ぐわけじゃないからいいですよ。梅雨になる前にはできますかね。」「梅雨までなんか、かかんないよー。」
じゃーそれでお願いしますよと、それで決まった、はずだった。「ともかく見積もりだしてよ。」「それじゃ、あとで送るから住所下さい。郵便番号から。」などと言われて、板金屋さんのノートに書き込んだ。
そこまで来て、板金屋さんは、しみじみ屋根を見上げてこんなことを口走った。「まー、これならこのまま放って置いても四五年は持つけどねー。」
「えー、そうなのー」
そこからのやり取りは省略するが、彼は、全く平気で、決まりかけた商談を諦めた。「納屋のことよりまず母屋のほうが先だよね。」などと言って。
結局、我輩は、親切かつ合理的な彼の助言に従って、屋根修理を見合わせることにした。
「いろいろ教えてもらった挙句、申し訳なかったですね。数年後にはお宅にやってもらうから。」と言うと、「その頃俺は生きてるかどうかわかんねーよ。」と笑った。
皮肉などではない、屈託の無い冗談なのだ。一点の曇りも無い笑顔で軽トラックに乗り込み、隣町へ帰る板金屋さんを、我輩は手を振って見送った。
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